北摂にも断層帯があります
北摂は内陸にあり、津波の直接の影響を受けにくい。これは事実です。同時に、北摂の足元には有馬-高槻断層帯があり、2018年には大阪府北部地震で震度6弱を経験しています。安全な場所だから副首都に、という言い方を私たちはしません。
都合の悪い情報を隠して選ばれた場所は、いざというときに役に立ちません。だからこのページでは、北摂の利点と、北摂に残るリスクを両方書きます。そのうえで、他の候補地のリスクも同じ密度で並べます。
北摂の利点
万博記念公園には、防災の役割がすでに与えられています。北部広域防災拠点であり、後方支援活動の拠点でもあります。備蓄倉庫があり、井戸設備があり、物資や部隊を受け入れる機能があります。ゼロから防災機能をつくる話ではなく、すでにあるものの上に積む話だという点は、他の候補地との大きな違いです。
立地としては、大阪湾の津波浸水想定区域から離れています。高潮の影響も直接には受けません。橋やトンネルを渡らないと到達できない場所でもありません。
ただし、これで1週間自立できるとは考えていません。非常用発電の出力と連続運転時間、燃料の備蓄量と補給経路、通信の多重化、上水と下水、食料と寝具。これらを具体的な数字で積み上げないと、「防災拠点があるから大丈夫」は気休めにしかなりません。
有馬-高槻断層帯という現実
北摂を語るなら、この断層帯を避けて通ることはできません。
地震調査研究推進本部(地震本部)は、2026年8月28日に有馬-高槻断層帯の長期評価を一部改訂しました。ここに書く数字は、その改訂版のものです。断層帯は神戸市北区淡河町から京都府乙訓郡大山崎町まで、長さ約55キロの可能性があるとされ、二つの区間に分けて評価されています。
- 東部区間(神戸市北区有馬町から大山崎町まで、約41キロと推定)は、マグニチュード7.5程度の地震が起き、そのとき3メートルから4メートル程度のずれを生じる可能性があります。30年以内の発生確率はほぼ0パーセントから0.04パーセント。平均活動間隔は1000年から2500年程度で、最新の活動は1596年の慶長(文禄)伏見地震。過去約3千年間に3回活動したと推定されています。
- 西部区間(淡河町から有馬町まで、約16キロの可能性)は、マグニチュード6.8程度。最新の活動時期と活動間隔が分からないため、30年以内の発生確率は算出できないとされています。
- 両区間が同時に活動する場合は、マグニチュード7.7程度。この場合の確率は求められませんが、各区間が単独で活動する確率より大きくなることはないと考えられています。
確率の欄を見て「ほとんどゼロじゃないか」と受け取ってしまうと、危険です。地震本部自身が、確率値が小さく見えても地震が起きないことを意味しないと注意を促しています。活断層の地震は間隔が数千年と長いので、30年という区切りで見ると値が小さくなるためです。実例として、1995年の兵庫県南部地震の直前の確率は0.02パーセントから8パーセント、2016年の熊本地震はほぼ0パーセントから0.9パーセントでした。どちらも起きました。
そして2018年6月18日、大阪府北部地震(マグニチュード6.1、最大震度6弱)が発生しました。気象庁は、有馬-高槻断層帯のごく近くで起きた地震だと説明しています。高槻でも茨木でも、住宅やインフラに被害が出ました。北摂に住んでいる人にとって、活断層は数字の話ではありません。
参考:地震本部「有馬-高槻断層帯」/地震本部「主要活断層帯の長期評価」(有馬-高槻断層帯の長期評価 一部改訂、2026年8月28日公表)/地震本部「長期評価結果一覧」/地震本部「2018年の主な地震活動の評価」
他の候補地のリスクも、同じ物差しで
北摂だけを厳しく見て終わりにしては、比較になりません。
大手前と上町断層帯
地震本部は、同じ2026年8月28日に上町断層帯の長期評価も一部改訂しました。断層帯は大阪府豊中市から大阪市、岸和田市を経て阪南市に至り、全体の長さは約56キロの可能性があるとされます。こちらも二つの区間に分けて評価されています。
- 主部区間(豊中市から岸和田市まで、約43キロの可能性)は、マグニチュード7.6程度。30年以内の発生確率はほぼ0パーセントから0.003パーセント。平均活動間隔は6400年から8700年程度で、最新の活動は約2700年前以後、11世紀以前と推定されています。動いた場合、断層の近くの地表では東側が西側に対して2.5メートル程度、あるいはそれ以上高くなる段差やたわみが生じる可能性があります。
- 沿岸部区間(泉大津市から阪南市まで、約23キロの可能性)は、マグニチュード7.1程度。平均的なずれの速度が分からないため、発生確率は算出できないとされています。
- 両区間が同時に活動する場合は、マグニチュード7.7程度。
確率の数字だけを並べると、上町断層帯の主部区間のほうが有馬-高槻断層帯の東部区間より低く出ます。ただ、確率が低いことと被害が小さいことは、同じではありません。上町断層帯の主部区間は大阪市の市街地の下を南北に通っていて、断層のすぐ上に何があるかという条件が北摂とは違います。断層の位置、想定される震度、庁舎や交通への影響まで含めて比べる必要があります。
ですから、断層帯があることだけを理由に大手前を否定するつもりはありません。大手前で本当に問うべきなのは、周辺の低地や鉄道や道路、職員の居住地域が被災したときに、参集や物資輸送や交代要員の確保が続けられるかどうかです。
咲洲と湾岸のリスク
南海トラフで起きるマグニチュード8からマグニチュード9クラスの地震について、地震本部は30年以内の発生確率を、すべり量依存BPTモデルで60パーセントから90パーセント程度以上、別の計算方法であるBPTモデルで20パーセントから50パーセントと評価しています。海溝型地震の中でいちばん高いランクです。防災対策で具体的な数字が必要な場合は、高いほうの値を念頭に行動してほしい、というのが地震本部の示している考え方です。
湾岸の人工島にとって、これは避けて通れない数字です。庁舎そのものの耐震性だけでなく、津波警報が出ている間に職員が到達できるのか、橋とトンネルと鉄道が同時に止まったときに交代要員と物資を送り続けられるのかが問われます。大阪府の業務継続計画や過去の検証でも、津波警報時のアクセスと職員参集は課題として扱われてきました。
参考:地震本部「上町断層帯」/地震本部「南海トラフで発生する地震」/上町断層帯・有馬-高槻断層帯の数値は、2026年8月28日公表の長期評価(一部改訂)によります。
「どこが安全か」ではなく、災害時に「どこが機能し続けるか」
三つの候補地に、リスクのない場所はありません。上町断層帯、有馬-高槻断層帯、南海トラフ。どれを選んでも、何かのリスクは引き受けることになります。
だから、立地を選ぶときの問いを変えるべきだと考えています。どこが安全か、ではなく、どこなら機能し続けるか。周辺が被災したときに、必要な職員と物資が何時間で到着できるのか。その体制を何日間維持できるのか。電気や水が止まっても行政の判断を出し続けられるのか。
この問いで三地域を比べた資料は、まだありません。私たちが求めているのは、その比較です。
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このページの公開日 2026年9月4日/最終更新 2026年9月4日。新しい資料や数値が確認できた場合は、内容を更新し、更新日を書き換えます。