副首都とは

副首都とは何か。首都機能移転との違い

首都を移す話ではありません。言葉の意味、首都機能移転や首都機能バックアップとの違い、海外の例、日本での議論の経緯を順に説明します。

副首都とは何か

副首都とは、大規模な災害などで東京の首都中枢機能が止まったときに、その全部または大部分を一定の期間だけ代わりに担い、平時には多極分散型の経済圏の中核も担う道府県のことです。2026年7月に成立した副首都法で、はじめて法律に書かれた言葉になりました。

首都そのものを東京から移すこと(遷都)ではありません。首都は東京のまま、非常時の代役と、平時のもう一つの成長の軸を用意しておく、という考え方です。

言葉のイメージだけで受け取ると、「大阪を首都にする話」と誤解されることがあります。法律が定めているのは、そこではありません。東京が動かなくなったときに、国の判断や行政サービスを誰がどこで引き継ぐのか。その受け皿をあらかじめ決めておく、という話です。

もう一つ大事なのは、副首都に指定されるのは市や町ではなく、道府県だという点です。内閣総理大臣が道府県からの申出にもとづいて指定し、その申出には道府県議会の議決が要ります。府が指定を受けたとして、では府内のどこに中枢の施設を置くのかは、法律には書かれていません。そこはこれから議論されるところです。

首都機能移転、首都機能バックアップとの違い

似た言葉が三つあります。混ざりやすいので、並べて整理します。

 副首都首都機能移転(国会等の移転)首都機能バックアップ
首都はどうなるか東京のまま。非常時に代わりを務める国会や中央省庁ごと東京圏の外へ移す東京のまま。機能の控えを別に持つ
ねらい災害時の国家機能の継続と、東京一極集中の是正一極集中の是正と、国政全般の改革業務を止めないこと
動かすもの非常時に引き継ぐ業務と、それを担う拠点三権の中枢そのものデータ、通信、要員、代替の執務場所
よりどころ2026年成立の副首都法1992年の国会等の移転に関する法律政府や自治体の業務継続計画
今の状況法律ができ、指定はこれから1999年に候補地が答申されたあと、動いていない各機関が個別に取り組んでいる

副首都は、三つのうちで言えば首都機能バックアップに近い発想を、国の制度として一段大きく組み立てたものだと考えると分かりやすいと思います。役所の建物を丸ごと引っ越すのではなく、非常時に必要な仕事を続けられる場所を、あらかじめ法律で位置づけておく。それが副首都法の中身です。

なお副首都法では、三権分立の考え方から、国会と裁判所については、それぞれが自ら検討することとされています。副首都といっても、国会がまとめて移ってくるという話ではありません。

日本での議論は、35年以上続いてきた

この話は、急に出てきたものではありません。むしろ、長いあいだ結論が出せずにきた議論です。

  • 1950年代なかばから、学者や研究機関が遷都論や分都論を提案していた
  • 1977年の第三次全国総合開発計画、1987年の第四次全国総合開発計画で、国の計画としても取り上げられた
  • 1990年11月、衆参両院が「国会等の移転に関する決議」を採択した
  • 1992年12月、国会等の移転に関する法律が成立、施行された
  • 1995年12月、国会等移転調査会が報告をまとめた
  • 1999年12月、国会等移転審議会が移転先の候補地として3地域を選び、答申した
  • 2003年に政党間両院協議会が設けられ、2004年12月の座長とりまとめでは、危機管理機能の中枢を先に移す考え方などが示された
  • その後、国会等の移転そのものは動かないまま今日に至る
  • 2026年7月、副首都法が成立した

1999年に候補地まで答申しておいて、その先へ進めなかった。ここが、この議論のいちばん重い部分です。バブル期の地価高騰を背景に始まった移転論は、経済情勢が変わるとともに勢いを失い、費用の大きさもあって決着しませんでした。

ただし、途中で議論の中心は移っています。1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件を経て、都市機能が一度に止まる怖さが具体的に意識されるようになり、2004年のとりまとめでは、まず危機管理機能の中枢を優先して移すという考え方が正面に出てきました。今回の副首都法が災害時の機能継続を前面に置いているのは、その延長線上にあります。

参考:国土交通省「国会等の移転ホームページ」

海外はどうしているのか

首都に全部を集めない国は、めずらしくありません。やり方は国によってかなり違います。

ドイツ(ボンとベルリン)

東西統一のあと、首都はベルリンに戻りました。ただし連邦省庁のすべてが移ったわけではなく、旧首都ボンに残った省庁があり、二つの都市が役割を分け合っています。一つの都市に全部を置かないという選択が、現に運用されている例です。

オーストラリア(キャンベラ)

シドニーとメルボルンのどちらを首都にするかで決着がつかず、二つの都市の間に、政治と行政のための都市を計画的につくりました。経済の中心と政治の中心が別の場所にある形です。

マレーシア(プトラジャヤ)

1990年代後半から、行政機能をクアラルンプールの外に新しく整備したプトラジャヤへ移しました。首都はクアラルンプールのままで、行政の拠点だけを分けた形になります。

韓国(世宗)

2012年に世宗特別自治市が発足し、多くの中央省庁が移りました。もともとは首都そのものを移す構想でしたが、憲法裁判所の判断で首都の移転は認められず、行政機能の移転にとどまりました。何を移せるのかは、その国の憲法や制度に左右されるという例でもあります。

アメリカ(ワシントンD.C.)

はじめから政治と行政のためにつくられた都市で、経済の中心はニューヨークにあります。緑の中に行政機能を置くこの都市の姿は、万博記念公園を考えるときの手本の一つです。

副首都法で決まったこと、決まっていないこと

2026年6月24日に衆議院へ共同提出された議員立法が、7月24日の参議院本会議で可決され、成立しました。正式名称は「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」といいます。参議院での採決は投票総数244のうち賛成123、反対121で、2票差でした。賛否が大きく割れた法律だということは、押さえておくべきだと思います。

決まったこと

  • 副首都という言葉に、法律上の定義ができた
  • 指定するのは内閣総理大臣で、道府県からの申出にもとづく。申出には道府県議会の議決が要る
  • 産業競争力の強化と経済活動の拠点づくり、交通網や都市基盤の整備、国の機関や特殊法人の拠点整備を進める
  • 東京から本社を移す企業への税の優遇などが想定されている

決まっていないこと

  • どの道府県が指定されるのか。大阪のほか、名古屋、福岡、札幌といった都市も関心を示しています
  • 指定された道府県の中の、どこに中枢の施設を置くのか。市町村名も、敷地も、府内での選び方の基準も、法律には書かれていません
  • 非常時にどの業務を何人で何日間続けるのか。そこから逆算される必要な床面積や費用

本サイトを更新した時点では、法律はまだ施行前でした。施行や指定の状況は変わりますので、最新の状況は国と大阪府の発表をご確認ください。

大阪では、これから何が議論されるのか

場所です。法律は道府県までしか決めていないので、府内のどこに副首都の中枢施設を置くのかは、これから議論されます。逆に言えば、今なら比較ができます。すでに庁舎があるからそこ、という決め方をする前に、非常時に本当に人が集まり、医療や物資が確保でき、長い期間機能を続けられる場所はどこなのかを、同じ物差しで比べることができます。

私たちは、その正式な比較対象の一つとして、北摂の万博記念公園を検討することを提案しています。万博記念公園に決めてほしいという話ではありません。大手前、万博記念公園、咲洲庁舎周辺を、同じ条件で比べてほしいという話です。

なお、この議論は大阪都構想の賛否とは別のものです。本プロジェクトは大阪市の再編について立場を取りません。

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このページの公開日 2026年9月4日/最終更新 2026年9月4日。新しい資料や数値が確認できた場合は、内容を更新し、更新日を書き換えます。